
川筋を 抜ける 風
広島に一泊の出張。同時進行で進む仕事の合間に、川沿いで一息。風が心地いい。広島も栄えているが、大阪や東京のヒートアイランドに比べると、まだ「気の流れ」がある。街を空気が抜けている。
理由は地形と密度。広島の中心部は太田川の三角州で、6本の川が南北に街を流れ、瀬戸内海に開いている。川面は建物より低く遮るものがないので、昼は海風が、夜は逆に山からの陸風が川筋を通って抜ける。
大阪も東京も、もとは水路で組まれた街だった。江戸は、山を背に水を前にする「背山臨水」の考え方で、地形と気の流れを活かして設計されたとされる。ただ今は、川に蓋をして高速道路を通し、建物が密集しすぎて、海風を地上まで届かせない。
人間にも風は欠かせないと思う。オフィスが植物だらけになっているぐらい植物を育てるのが好きだが、植物は「日光」と「水」だけでは育たない。「風」がないと茎が細いまま倒れ、根が腐る。人も同じで、風が通らないと、細くて根の腐った人間になりそうだ。
風は体温調整のためだけのものではない。「風の便り」「どうした風の吹き回しか」「人間関係に隙間風が吹く」「この職場は風通しがいい」。風は昔から、人の関係や心を表す言葉として使われてきた。
10代から20代はダンスに明け暮れ、現地に習いに行くほどニューヨークにはまっていた。その頃に観たスパイク・リーの『Do the Right Thing』は、猛暑のブルックリンで人の関係が壊れていく話だった。暑さと風のなさが、人を変えていく。
家でもオフィスでも、まずは窓を開け風を通すことをしているが、大阪・東京では限界がある。
将来は、風の通りが良い場所で、好きな音楽を聴きながら、自分にしかできないことで世の中の役に立てる環境をつくっていきたい。
これが今回の広島出張で感じたこと。
音楽と情景を紐付けて記憶に残すため、その場所で聴いていた曲でプレイリストを作ることを習慣にしている。この日、聴いていた曲の中から一曲。
Cross The Heartland
Pat Metheny
彼らが描いたものは、都市部のビル群ではなく、どこまでも地平線が続くトウモロコシ畑、広い空、そこを吹き抜ける風。広大な大自然の中で作られた曲。屋外で風を感じながらぜひ聞いてほしい。