夜明け前のグリーンランド上空。青い雪原と山脈、地平線に桃色の帯

北緯80度のトワイライト

白濱良太

グリーンランドの上空。飛行機の位置情報を見ると北緯80度、高度9,600メートル。ロシアの上空が飛べなくなってから、日本からヨーロッパへの飛行機は北極回りになった。だから、この景色の上を通る。

窓の外は空も地面も青一色。現地はまだ夜明け前で、もちろん人の気配はどこにもない。

グリーンランドは国土の約80%が巨大な氷床に覆われていて、その厚さは最も厚い場所で約3,000メートルに達する。3kmだ。すごくないか。南極に次ぐ、世界で二番目の氷の塊。

自分はロマンチストなので、これは何万年も前のタイムカプセルなのか、とすぐに想像が広がってしまう。

こんな土地に、約5万6,000人が暮らしている。そのほとんどがイヌイットの人たちだ。極寒の地で、古くからこの大自然と共生し、独自の豊かな文化が今も受け継がれている。そう考えると、やはりロマンを感じてしまう。ロマンチストなので。

いろいろと思考が広がっていくが、飛行機のシェードを上げた瞬間は、そのトワイライトの美しさに心を持っていかれた。

日頃から、頭の中でいろんな独り言を考えているデフォルトモードネットワークを抑え、ポジティブもネガティブも、勝手に湧き起こる雑多な思考を止めるために、瞑想やジャーナリングをいろいろ試してきた。世界各国に招かれる瞑想の指導者のプロモートもしているので、流派の違いくらいは分かる。それでも「無心」になるのは無理だと思っていた。

が、この大自然の絶景、想像を絶する美しい景色を見て「ハッ」とした瞬間は、間違いなく無心だったと思う。数秒だったと思う。こういう絶景を見る機会を、息子にも、自分自身にも、もっと与えてあげたい。

音楽と情景を紐付けて記憶に残すため、その場所で聴いていた曲でプレイリストを作ることを習慣にしている。この日、聴いていた曲の中から一曲。

An Ending (Ascent)

Brian Eno

もともとはアポロ計画の映像のために書かれた曲。飛行機の窓から景色を眺めるときに聴いてほしい。高いところから、人の気配のない青い世界を見下ろす感覚そのもの。宇宙に行けるなら、持っていきたい曲。