船の航跡の先に、緑に覆われた島が横たわっている

桃太郎はプロモーター

息子との男二人旅。鬼ヶ島大洞窟がある、香川県の女木島へ渡った。桃太郎の物語の場所に息子が興味を持ってくれて、一緒に行けるのは小学生の今だけだろう。

桃太郎の話は昔から大好きで、つい深掘りして考えてしまう。短くまとめると「瀬戸内海に住み着き、周りで悪さをする海賊を退治する」物語。

なぜ好きなのか?

桃太郎は一人で鬼退治に行っていない。日本一のきびだんごで仲間を増やして、一緒に行った。自分にできないことは、できる人と組む。これは、自分がずっとやってきたプロモーターとしての仕事そのもの。すごい人のハブになって、一人ではできないことを形にする。桃太郎は、プロモーターだと思っている。こういう仲間を集めて一緒に大きなことを成し遂げていく話に惹かれる。息子にも、何でも一人で抱えずに、仲間と一緒にやっていく姿勢は持ってほしい。

もうひとつ。「鬼」は、正体のよく分からないものに人が付けた名前。正体を知れば鬼ではなくなる。お化け屋敷も、電気をつけたら怖くない。当時の人は何が怖かったのか、そんな話も息子としながら、鬼ヶ島大洞窟を見に行った。

ここから先はうんちく。(桃太郎が大好きなので長くなるが)

香川県に残っている話は、女木島の洞窟を隠れ家にした海賊が、周りの土地に出没して悪事を重ねていた。この海賊が鬼で、桃太郎がそれを退治した。高松の鬼無(きなし)という町には、桃太郎が鬼を退治して「鬼が無くなった」からこの地名になった、という伝承も残っている。

そして、桃太郎といえば岡山県。吉備津彦命(きびつひこのみこと)が、鬼ノ城(きのじょう)を拠点にしていた温羅(うら)という鬼を討った話が、桃太郎の原型とされている。温羅は、朝鮮半島から来た百済の王子だったとも言われる。どちらの土地でも、鬼の正体は、海の向こうから来た人たちだった。

干支から読む説もある。北東の方角を鬼門と呼ぶ。丑の刻と寅の刻のあいだ、「うしとら」の方角。だから鬼には牛の角があり、虎のパンツを履いている。鬼門の裏側、西に並ぶのが申(さる)・酉(とり)・戌(いぬ)。東は木、春、始まりの方角で、「桃」という字は木へんに「兆」と書く。始まりの兆しである桃が、西の攻めの力を持つ猿・鳥・犬を率いて、鬼を討ちに行った。そう読み解く。

桃は古事記にも出てくる。イザナギが黄泉の国から逃げるとき、追っ手に桃を投げつけて退けた。桃は昔から、邪気を払うものだった。

一方で、福沢諭吉は子ども向けの教えの中で、たとえ悪い鬼でも、宝を奪うのはダメだと書いている。鬼の側から見たら、桃太郎の方こそ海から攻めてきた集団だったのかもしれない。誰が鬼で、誰が正義だったのか。

息子と女木島に渡った話に戻す。

ここには、人が掘った広い洞窟がある。奥行きは400メートルほどで、中には広間のような場所がいくつもある。高松の目の前にあって、行き交う船が見渡せる島に、こんな洞窟がある。鬼のすみかではなく、海賊の基地だったのではないか。洞窟の中で、海賊の気持ちになって考えていた。

鬼ヶ島は、息子よりも、親父の方が楽しんでいた気もするが。

3日間の男二人旅。二人でたくさん話せてよかった。男二人旅は毎年続けていく。成長に合わせて、次はどこに行くかを考えるのが楽しみだ。